言葉は生きていく上ですべての基礎となるものです。また心の発達がその言葉の力を支え、その言葉がまた心の発達を支えます。そういった意味で言葉の力が弱いと学習だけではなく、情動のコントロールや社会性を養うのも難しくなります。幼児期から適切なアプローチをすることで言葉の発達を下支えすることができます。言葉の遅れが気になる、言葉の使い方がおかしいと感じたら少しでも早く専門家に相談しましょう。

言葉の発達を阻害する3つの要因

  • 自閉症スペクトラム障害
  • 知的障害(境界域含む)
  • 学習障害

※これ以外にも言語に遅れが生じる理由は様々にありますが、まちるどでは上記3つのいずれかに該当し、かつ普通級に在籍する生徒さまを対象に学習支援を行っております。(診断は必要ありません。)

  1. 自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害は発達障害の一つです。対人関係やコミュニケーションに問題があったり、こだわりなどが見られます。自閉症とアスペルガー症候群の違いは言語の発達に遅れがあるかどうかですが、現在は両者とも自閉症スペクトラム障害に含まれています。

自閉症の子どもたちは幼少期からその兆候を示すことがあります。特に言葉の発達に関係の深い共同注意があるかどうかがとても大切です。

共同注意とは?
共同注意とは他人がモノや人に向ける注意に自分も同じように注意を向けることを言います。例えばお母さんが何かを見た方向に自分も同じように見る(お母さんの視線を感じ取れる)、お母さんが何かを指差したときに子どもがその方向に注意を向けることなどがあります。この力がのちの言葉の発達、他者と心を理解し合える発達につながっていきます。

他者から受け取る力
お母さんから名前を呼ばれて振り向く、お母さんが笑っているから自分も笑う、など周囲の大人から働きかけられる言葉、行動などを受け取る力があるかどうか、それによって心が動く(快・不快、喜怒哀楽のような感情を感じる)かどうかも言葉の発達には欠かせません。

モノや人に向かう心の動き
周囲の人から自分に向かう視線や言葉、自分がその対象の人やモノに対して感じる心の動き、これらの発達は大人になったあとも非常に大切な働きをします。勉強につまずく子どもの中にはそもそも学習内容が「わかる」ことがどういうことなのかわからない子どもたちもいるのです。

  1. 知的障害

知的障害があると日常生活を送ること、読み書き、数、概念の理解、コミュニケーションなどに支障が出ます。IQ70が知的障害かどうかの判断基準とされていますが、普通級にもIQ70を下回る子どもたちや境界域と言われるIQ71~IQ85の子どもたちがたくさん在籍しています。これらの子どもたちは日常生活を問題なく送れている(送れているように見える)ため、勉強ができないことを「やる気がない」「努力が足りない」と自己責任として周囲の大人は思いがちです。境界知能の子どもたちは自律学習が極めて難しく、授業に遅れなくついていくためには非常に困難を抱えてる状況だと言えます。

境界知能の子どもたち
境界知能の子どもたちは自分が勉強ができないことをわかっているため自己肯定感が下がりやすく、自信を失っていることが多いです。丁寧な支援が必要なのは実はこの層です。私が見てきた中ではIQ90を下回ると授業に遅れなくついていくのは難しいという印象です。子どもの状態を一度確認したいという方は知能検査の受診をお勧めします。

知能検査という落とし穴
保護者さまが一番気にされる「うちの子は周りの子に追いつきますか?」という質問。知能検査は子どもの状態を確認するためのものであって学力テストではありません。知能検査の数値に一喜一憂するのではなく、冷静に検査結果を理解することが大切です。知能検査を何度も受けて(受験回数に制限があります)数値が上がったとしても、それは知能検査に慣れただけで知能が上がったわけではありません。知能検査の数値を上げることを考えるのではなく、仮にIQが90であればその中で子どもの得意な能力を伸ばしていける方法を模索することが重要です。ここで言う能力を伸ばすというのは周りに追いつくという意味ではありません。能力を伸ばすというのは本人の能力が伸びるいうことです。本人が伸びている間に周囲の子どもたちの能力も伸びているので、追いつくのではなく、これ以上差が広がらないように支えていくことが大切です。

  1. 学習障害

学習障害も発達障害の1つです。学習障害単独で発症する頻度は低く、背後に自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)があることがほとんどです。

「勉強ができない=学習障害」ではない!

学習障害という名前がわかりやすいためか、勉強ができない=学習障害と考えられる保護者さまは非常に多いです。ほとんどの保護者さまが「うちの子学習障害でしょうか?」と相談にやってこられます。しかし先ほども書きましたが、学習障害が疑われる裏には他の発達障害がある、または知的障害(境界域含む)、もしくはその両方であることが多いです。これらの要因がすべて排除されて学習障害が疑われる場合ですが、文字が歪んで見える、二重に見える、文字の形がバラバラに見える、文字の順番がわからない、文字を順序通りに読んでいるのに間違えるなどその訴えは多岐にわたります。お子さまが学習障害かな?と思ったら学習障害者の視覚を体験できるイベントなどもありますので、保護者の方が当事者の体験をしてみるのもお勧めです。

心の発達支援とは

子どもの心の発達に大切なのは親が子どもに関心を持つことです。子どもの能力を愛するのではなく、ありのままの子どもを愛する親の心が子どもの心の発達を支えます。

子どもの心をつくる
親御さんに子どもの興味のあることを尋ねると「特にこれが好きとか、これが得意といったものもなくて…。もともと好奇心もあまりなく、どこに連れて行っても興味を示しませんでした」と言われることがあります。感情の動き(揺れ)の幅は個人差があるので、とても感動する、大笑いするから感情が豊かで正しいというわけではありません。ただ、何にも心が動かない、もしくは動きにくいとなると人間が発達していく上で必要な言葉、社会性、コミュニケーションなどいろいろな機能、能力の発達に影響が出てしまいます。もともと感情の幅が少なくて心が揺れ動きにくい子どもたちは言葉が少なく、社会性も乏しいことがあります。そこで親ができることは子どもと体験を共有することです。

「ともに喜び、ともに悲しむ」共有体験
上述の「どこに連れて行っても興味を示しませんでした」に注目してください。連れていくだけではだめなんです。「これ面白いね!」「これ楽しいよ」「一緒にやってみよう」親が子どもの目線まで下がり、横で語りかけ、同じ空間にあるモノや人に対する興味や関心を親子一緒に共有する必要があるのです。大人が楽しむ姿、ひたむきな姿は大人が思う以上に子どもに強烈なインパクトを与えます。まずは親が興味ある姿を見せることが非常に大切です。公園に着いたよ!さぁ、遊んでおいで!ではだめなのです。

ごっこ遊びの大切さ
子どもと一緒に〇〇ごっこをしたことがありますか?お買い物ごっこや戦隊ヒーローごっこ、または秘密基地遊びなど、ごっこ遊びには学びがたくさん盛り込まれています。子どもが誰かのまねをする、もしくはなったふりをするというのは他者の視点に立てなければできません。誰かになったつもりでセリフを言う、なり替わった人の気持ちを考える、子どもはそのような経験を通して自分ではない誰かを学ぶことになります。そして遊びを通じて想像力、社会性、コミュニケーション能力を育て、情緒面の発達を促します。ごっこ遊びは心理的にもとても重要な遊びなのです。

親子遊びの大切さ
この遊びを面倒くさいと一蹴せずに週末の20分だけでもいいので子どもと一緒に遊んであげてほしいと思います。同じ空間を共有し、コミュニケーションを取りながら、そのときにぜひ大人がどう感じるのかを言葉で伝えてほしいと思います。例えば、お買い物ごっこで、欲しいものが買えたとき=「うれしくなる」、売り切れだったとき=「がっかりする」などその場面で起こる感情を言葉で丁寧に伝えてあげてください。そうすることで子どもは自分の中に起きた気持ちを表現する言葉を知り、将来、感情を言語化できるようになります。これができないと「うざっ」「やばっ」など自分の気持ちのラベルも一辺倒になり自分が今どんな気持ちなのか理解、整理、表現できず、癇癪を起こしたり、切れることになってしまいます。


言葉と心は切っても切れない縁

言葉は独立して発達しません。言葉は発達の中にあり、社会性の中で育ちます。したがって言葉の発達には心の発達も欠かせないのです。言葉と心はつながり、お互いを支えあって成長していくので、言葉の発達が遅い子どもたちには両方の支援が必要です。まちるどでは言葉の発達を促すために心の支援も大変重要視しています。

言葉と心の発達支援
言葉と心の発達支援に関しては、お子さまの発達程度によってカリキュラムが変わります。完全に遊ぶことから始めた方が良いケースもあります。遊びは子どもにとって最大の学びです。ごっこ遊びができないと学習能力も伸びません。人間は一足飛びに発達することはないので、何かを飛ばして次のものを手に入れることはできないのです。

学習を通して言語発達を促す
まちるどの学習スキルトレーニングの詳細は(こちら)をご覧ください。認知機能にでこぼこがある、特に言語、ワーキングメモリーの数値が低いと勉強面はかなり辛くなります。先生の説明がわからない、指示されたとおりに動けない、読み書き、計算も工夫をしないと小学3年生ごろからだんだんついていけなくなる可能性があります。

塾や家庭教師の指導法ではなぜだめのなか?
一般的な塾や家庭教師の指導法は誰もが同じ方法で学ぶ指導法です。漢字をひたすら書かせたり、何枚もの計算プリントを解かせたりというやり方が全員に適してるわけではありません。もちろんそれがピッタリはまる子どもたちもいます。言語とワーキングメモリーが高い、それから手先の器用な子どもたちにはこの方法が向いています。しかし、言葉の発達が遅いということは言語とワーキングメモリーのどちからもしくは両方の機能が低いということなので一般的な学習方法は向きません。そして、こういった子どもたちに指導できるノウハウを持った先生は非常に少ないと言えるでしょう。

なぜ特別な指導法は難しいか?
遅れの原因となる問題をつきとめるためには最低限の心理学と言語学の知識が必要です。やみくもに支援をしても功を奏しません。心理的課題や言語学の問題を分析できない指導者が関わると子どもたちを余計に苦しめることさえあります。しかし残念ながらその原因を分析できる専門家は非常に少なく、またつまずきがわかってもそれをどう改善していくかのノウハウ(引き出し)が少なくては十分な支援を行えないこともあります。まちるどでは必要なアセスメントを適所に実施することができ、適切な学びを導き出せる独自の指導法があるので安心して授業を受けていただくことができます。

万全な学習機能トレーニング体制
まちるどでは今まで発達障害、知的障害、境界知能、選択性緘黙などさまざまな子どもたちの学習支援を行ってきました。初めからノウハウがあったわけではありません。何年も試行錯誤を重ねる中で完成したのが学習機能トレーニングです。現在は全員がほぼ違う内容の学習支援を受けています。まちるどでは困りごとがわかった時点で個人ごとに完全に一から指導案を作成します。これが他ではまねできないまちるどのオリジナル支援の所以です。指導教材がなければ講師が作ります。まちるどで対応できない困難が見つかったときは医療機関、支援機関のご紹介も可能です。良い支援法が見つかるまでお時間を頂戴することもありますが、できない、伸びない状態を生徒のせいにして終わるということはありません。